勘違いだったようで【kn】 ページ11
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箱があった。
「チョコじゃね？」
「はぁ〜！おモテになりますねぇ〜お兄さん！」
「まあ…チョコだろ」
「チョコだろうな」
「え、朝から自慢とかやめろよきんとき」
まだ俺が一言も発していないというのに、やいのやいのと、三者三様…いや、五者五様の反応をしながら俺の机に群がってくる奴等。
まあ…正直俺も、コイツらと同じような感想では…ある。ただ、ちょっとだけ。ちょっとだけの期待があって。
キラキラとした目で、でもニヤニヤと笑いながらぶるーくが前のめりに聞いてくる。
「え、ねぇねぇきんさんそれ誰から！？」
「名前とかは書いてなさそう…だけど。」
ブルーのリボンがかかった平たい箱を、なるべくひっくり返さないようにしつつ見てみるけれど、まあ案の定名前は書かれていなくて。…いや、書いてる方が少ないだろ。
開けてみようか少し迷ったけれど、…一旦やめておいた。
朝っぱらから期待と期待と期待で埋め尽くされてしまった俺の脳内はどうしても浮き足立つ。上品なブラウンの箱にかかった蒼色のリボン。そんな丁寧な包装見る度に高まる高揚感のせいで心臓が鳴り止まない。
少し話を変えようか。
俺のクラスにはAちゃん、という女の子がいる。
1年の時から同じクラスで、まあとにかく小さくて可愛い。例えるならうさぎのような小動物によく似た子。少し人見知りなところはあるけど、でも慣れてくれたら人懐っこくふわりと笑ってくれる女の子だ。
そんな彼女に、俺は一目惚れをキメてしまったわけで。
Aちゃんと一緒に過ごす２回目のバレンタインデー。1年の時から、挨拶したり、雑談したりと少しずつ話しかけることで俺に慣れてもらって、その甲斐あってか、2年にあがってからはAちゃんの方から話しかけてくれることも増えてきた。
自惚れかもしれないけど、Aちゃんは俺と話す時は普段よりよく笑ってくれるし、 この前なんて「きんときくんと一緒にいるとなんだか安心できるの」という舞い上がりそうな言葉を貰ってしまった。
こんなの、下手な男は余裕で勘違いするし、実際俺はまんまと惹き込まれた。
1年の冬はさすがに無理だよな、と諦めたけど、今年こそは…って期待していたのは確かだ。
これ、Aちゃんからのチョコだったらいいな……
「おーい、きんときさーん」
「ぇ、あ、なに？」
「顔にやけてますけど」
きりやんが呆れた顔をして肩を竦める。俺はうるせぇ、ときりやんの脛を蹴っておいた。
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作者名：梅餅 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/12Saku111/
作成日時：2023年11月30日 16時
