【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ17)

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講堂の中がしん、と静まり返る。休日のこの時間は元々ここにいる人自体少ないのだが、それでも私とスマイル達以外の人はいる。入る前に何人くらいいるか確認はしたが、そんな関係ない彼らの視線さえ集めてしまっているような気がして汗がたらりと垂れた。

差し出したのは友人と2人で綺麗にラッピングしたチョコの箱。昨日は自信満々だったのに今ではその綺麗さがプレッシャーだ。

スマイルの友人さんは思い思いの反応を気づかれないように、でも分かりやすくしている。そんな中で表情一つ変えないスマイルは目立っていた。

「…俺に？」
『と、友達と作ったんだけどね、ちょっと余分に出来ちゃって！スマイルたまにお菓子くれるし、そのお礼にって！それだけ、それだけだから！』

よし、よし！言えた！別に怖いものは入ってませんよ＆本命だと気づかせない例文！ちゃんと考えて、練習してきて良かった…！

一気に言い切った私は安堵の気持ちでいっぱいで、その時の彼の些細な表情の変化に気づくことが出来なかった。次に私が顔を上げた時のスマイルはやっぱり薄いリアクションで。

「ふーん。ま、ありがと。」
『よ、よかったよかった！それじゃあ私、これから友達とお出かけだから！じゃあね！』
「ああ」

意外とすんなり受け取ってくれて驚き半面、手の中から消えた包の重さに感動した私はくるりと振り返りクラウチングスタートを決めて講堂を出た。
そして「よく頑張った！」と私を受け止めてくれた友人の胸でもう一度安堵のため息をつき、私の集大成である惚れ薬が効いてくれることを祈って街へと繰り出した。

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「え〜！スマイルがチョコ貰えるトカ、明日ユニコーンでも現れるんじゃない！？」

ケラケラと笑いながら、でも興味を隠しきれずにいるBroooockが言った。他の友人らもそれな、と頷いている。…ただ1人を除いて。

そのただ1人である、Nakamuという名の青年は去っていく少女の背中を見つめながら呟いた。

「…可哀想になぁ、あの子。」

水色の瞳が、紫紺の男の手中に収まるチョコに向く。
紫紺の男は笑っていた。

「可哀想って？」
「知らねーのきりやん。さっきの子だよ、"いっつもスマイルがドヤ顔で自慢してきた子"」
「え"っ」

不思議そうに尋ねたきりやんは、返ってきた答えに思わず顔を引きつらせる。

「よかったな、スマイル。"2年の努力が報われて"」

さて、毒を盛っていたのはどちらの方か。

「ああ、そうだな。」