【WT】まっしろなせかい【短編集】 (ページ9)

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はちみつとミルク【br】ページ9

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………眠れない。

申し訳程度に電気が消されたはずの室内は何故か明るい。私の手の中に収まる光源からは動画サイトの音声が垂れ流しになっていて、私は2時間ほどほぼ惰性で画面を上下にスライドしていた。

明日＿あー、もう今日か＿が朝早いことなんて百も承知だ。そして、今私がしている行為が睡眠を阻害していることも重々承知である。でもなんだか、目をつぶって暗闇に意識を落とす気分になれなくて。

画面上部に表示される時間はとっくに午前3時を過ぎている。そして家を出る時間は8時。寝ないと朝の私が痛い目を見るだけだが、

うーん………完徹コースかなこれ…

画面を伏せても、ゴロゴロとベッドの上でのたうち回ってみても、無理やり瞼を閉じようとしても、どうも効果がないようで。すっかり冴えてしまった目で天井を見上げる。

……ふと、恋人の顔が思い浮かんだ。

高校からの友人であり恋人であるぶるーく。
いつでもマイペースで、ふわふわしてて、ゲームが大好きな彼。今日は撮影のある日だったから、「おやすみ」と無言で彼に手を振ったのは4時間ほど前のことだ。

この時間だし、よっぽど大変な撮影になっていない限り、もう彼もベッドの中ですやすやと眠っている頃だろう。そんな彼に頼るのはやっぱり気が引けるというもので。しかし眠れないものは眠れなくて。

『牛乳………あとは………はちみつ…………』

独り言のようにぽつぽつと呟きながら、私はキッチンの電気をつけた。

ぶるーくが料理をするから、ある程度の食材はいつも冷蔵庫にある。慣れた手つきではちみつの瓶と牛乳パックを取り出し、はちみつミルクを作る。ホットミルクでもいいけど、ちょっと甘いものが欲しかったから。

電子レンジにマグカップを入れてタイマーをセットする。
その時だった。

「わるいこだぁ〜れだ！」
『ぅひゃぁ！？』

するり、と肩から私に被さってきた大きな体に私は大声をあげる。押し損なったあたためボタンを押したのは、私の指ではなく、私に絡みつく腕の先のすらりとした指だった。

「こんな時間にはちみつ食べたらぷにぷにになっちゃうよ？」
『ぶ、ぶるーく…！もう、びっくりさせないでよ…』

ゆったりとした落ち着く声で、でも夜だからかいつもよりは幾分静かにぶるーくは笑った。

『てか、もしかして起こしちゃった？ごめん…』

ぶるーくに後ろからがっちりと抱きしめられた状態で私がそう尋ねると、ぶるーくは私の頭を撫でながら言った。