【オリジナル】好みの男をひたすら酷い目に合わせようと思う。

深窓のファム・ファタール ページ12

・香る程度の恋心(？)と失恋(？)
・やべーご令嬢
・不法侵入(？)
・健全な友人
・現代
・昔の回想

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　私がまだ幼い頃の話になる。
　幼いと言っても、もう1、2年すれば義務教育を終える頃、なおかつ周囲の青い春が旋風を巻き起こす頃のことだ。

　ゲームセンターどころか、小洒落たカフェの一つもない、そんな絵に書いたような田舎において、恋バナというのは年頃の子どもたちの数少ない娯楽だった。
　隣のクラスの佐藤が小島に告白した、だとか、野球部の村田とマネージャーが付き合っている、だとか、一組のあのカップルが別れただとかいった、そんな安いゴシップが話の主な種だった。
　そんな中、当時の私はと言えば、惚れた腫れたの話に興味はなく、気まぐれに自転車を走らせることが何よりの娯楽だった。まあ「恋愛に興味ない俺かっこいい」みたいな痛い発想から生まれた趣味だったのだが。学校の帰り道にわざと知らない道を通って帰ったり、休みの日、自転車ひとつで遠出してみたり。
　そうして、町のあちこちを自転車で駆けては、この町のことなら何でも知っているのだと自惚れた。面倒な事は忘れ、知っている道、知らない道を走っている間は、自分ではない誰かになったようで心地よかった。当時の私は本当に馬鹿というか、考え無しというか。些細な事で自己陶酔に浸る癖に、現実から逃げ出したかった。

　今思い返せば、もしかすると、現実から目を背け続けていた果てに見た、白昼夢だったのかもしれない。むしろ、そうであって欲しいことが、その時の私には起きた。

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